東京造形大学 卒業研究・制作展
"既視風景"
東京造形大学 4号館 4-C     2025.1.24 - 1.26
写真を見るとき、二つのことが起きている。一つは写真によって自分を再認識することである。写真を撮って見返す時、過去の自分と再会し、同時に過去から現在の自分の変化を認識させられる。そして写真によって、過去の風景に二度と触れられないことを突きつけられる。二つ目は、外部への相互的な影響である。他者が自分の写真と対面した時や自分が誰かの撮影した写真を見た時、写真に映る風景を自分の記憶のように、自分の事のように感じることがある。それが幻想であると理解していても、無意識に記憶へ介入する・される現象が起きていることに興味を抱いた。写真は、自分自身と外部という二つの方向へ同時に影響を与えている。そして、これらは意識に上らない潜在的なものであり、写真で認識する無意識である。
この研究では、写真を見たときの無意識的な影響に注目し、自ら撮影した写真に自分以外の誰かが介入し得る状態を目指した。写真のセレクトでは地域や被写体の偏りを無くし、人の肖像を除いている。また、写真一枚一枚がボックスの額に収められ独立した状態を作った。つまり、これらはいわゆる「私らしさ」を排除した写真である。ここで言う「私らしさ」を持つ写真とは、自己やアイデンティティを含む表現や、私と誰か、何処かとの関わりをを示すある種の自己開示的なものであり、らしさの排除によって自分だけのものではない、自分から一歩遠ざかった写真、記憶が見えてくる。私自身を開示する情報を持たず、思い入れなどの情緒的な感覚から脱した写真は、だれかの記憶と交わり、その境界を超えるかのような体験をもたらす。
 

プリント:発色現像方式印画
35mm、120mm(6×7) カラーネガフィルム
  額装: 498×394、548×677
   アクリル板、木材に白塗装、マットボード
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